脂肪溶解注射の原理

脂肪を減らす仕組み

脂肪溶解注射は、脂肪細胞を局所的に破壊または脂肪分解を促す薬剤を注射することで、脂肪を減少させる施術です。代表的な成分には、デオキシコール酸やリン脂質系の薬剤があります。これらの成分は脂肪細胞の膜を破壊し、脂肪細胞内部の内容物を体内で代謝させることで、徐々に脂肪量を減らします。

効果が出るまでの過程

施術後は、注射部位に炎症が起き、数日～数週間かけて腫れや赤みが徐々に収まります。その後、脂肪が分解され、硬結やしこりとして触れることもありますが、時間とともに体内で吸収されて解消されます。効果は即時ではなく、数週間〜数か月かけて目に見える変化が現れるのが一般的です。

よくある副作用

脂肪溶解注射には、比較的高頻度で起こる副作用がありますが、多くは一過性です。

腫れ（浮腫）

施術部位の腫れは、注射による局所的な炎症のために起こります。特に顎下や顔周りは腫れやすく、数日～1週間程度で自然に改善します。

瘀青（あざ）

注射針による軽度の出血が皮膚下で起こることで、青紫色のあざが生じることがあります。多くの場合、2週間以内に自然に消えます。

痛み・圧痛

注射部位に軽度～中等度の痛みや圧痛を感じることがあります。痛みは一時的であり、鎮痛薬や冷却で緩和することが可能です。

硬結・しこり

脂肪分解の過程で、注射部位に硬結やしこりができることがあります。通常は数週間～数か月で自然に改善しますが、しこりが長引く場合は医師に相談する必要があります。

感覚の変化

注射部位周辺で、一時的な感覚鈍麻やチクチク感が出ることがあります。神経への影響によるもので、ほとんどは時間の経過とともに回復します。

まれなリスクと重篤な合併症

脂肪溶解注射は、まれではありますが重大な合併症が報告されています。

感染

不適切な衛生管理や非滅菌環境での施術により、局所感染や膿瘍が起こる可能性があります。感染が進行すると、施術部位に強い痛みや赤み、発熱を伴うことがあります。

永久的な瘢痕や皮膚凹凸

過度の組織損傷や皮膚壊死により、永久的な瘢痕や凹凸が残ることがあります。特に施術者の技術や薬剤の量が適切でない場合にリスクが高まります。

深部の硬結や嚢胞形成

自己注射や不適切な製剤使用により、深部に硬結や嚢胞が形成されることがあります。これは数か月にわたって残ることがあり、場合によっては医療的処置が必要です。

神経損傷

顔や顎下など神経に近い部位への注射で、まれに神経損傷が起こることがあります。顔のしびれや筋肉の動きに影響を与える可能性があります。

重篤な局所反応

非承認薬剤や過剰投与により、壊死や深部結節、皮膚変色などが起こる場合があります。これらは治療が困難で、後遺症として残ることがあります。

リスクを下げるためのポイント

脂肪溶解注射のリスクを下げるには、以下の点に注意することが重要です。

製剤の確認

使用する薬剤が承認されているか、成分や安全性データを確認します。海外製の非承認薬剤やネット購入製品の使用は避けましょう。

施術者の資格

医師または認可された有資格者による施術を選ぶことが重要です。術前診察と十分な説明（インフォームドコンセント）が行われているか確認します。

施設環境と衛生管理

クリニックの滅菌管理や緊急時対応の体制が整っているかを確認します。無資格者によるサロンや小規模施設はリスクが高まります。

既往歴・服薬の確認

出血傾向、妊娠中、免疫抑制、抗凝固薬の使用など、既往歴や服薬状況を施術前に必ず相談します。

注入量・回数の適正化

一度に大量の薬剤を注入するより、段階的に分けて施術し、経過を観察することが安全です。

術後のセルフケアと注意点

冷却と安静

施術後は腫れや痛みを抑えるために、タオル越しで短時間冷却します。過度なマッサージや圧迫は避けましょう。

痛み管理

軽度の痛みには市販の鎮痛薬で対応可能ですが、服薬中の薬との相互作用には注意が必要です。

感染兆候の確認

赤みの拡大、膿の排出、発熱、強い痛みがあればすぐに医療機関を受診します。

医師のフォロー

施術後は指定された通院や写真による経過観察を守ることが重要です。早期に異常を発見することで、重篤な合併症を防ぐことができます。

受ける前に医師に確認すべき質問

• 使用する薬剤は何か？国内で承認されているか
• 私の体質や病歴で注意点はあるか
• 起こりうる副作用とその対応は？
• 施術回数や間隔、費用の目安は？
• 術後フォローはどのように行われるか

これらを事前に確認することで、安全性や施術者の信頼性を判断できます。

よくある誤解

部分痩せは保証される？

個人差が大きく、体質や生活習慣により効果は異なります。複数回の施術や他の生活習慣改善と併用する場合もあります。

痛みや腫れはどれくらい続く？

多くは数日～数週間で改善しますが、しこりや感覚異常が長引く場合は医師に相談が必要です。

まとめ

脂肪溶解注射は、適切な薬剤と技術、衛生管理の整った施設で行えば比較的安全に行える美容施術です。しかし、非承認薬剤や無資格者による施術では、感染や神経損傷、永久的な瘢痕など重大な合併症のリスクが高まります。施術を検討する際は、医師による診察と十分な説明、術後フォローがある施設を選び、疑問点は必ず事前に確認することが重要です。

脂肪溶解注射の安全性は個人の体質や施術環境によって変わります。リスクと効果を十分に理解し、正しい方法で施術を受けることが、満足のいく結果につながります。